名古屋市瑞穂区『ゴトウ製靴』は間違いなく最高峰の製靴店

本当は教えたくないお店


本当に大事にしているプロダクトはわざわざ公開したくないものです。
内緒にしておく愉しみがありますし、何か変な因縁を付けられても面白くないですから。


しかし、色んな人から質問を受けることが多くなったので、僕がお世話になっている靴店『ゴトウ製靴』を紹介したいと思います。


「靴にいくらまでだせるか」という問


僕は靴が好きです。靴マニアではないので持っている紳士靴は二足だけです。
靴は地面のゴツゴツから僕たちの足の裏を守ってくれます。
全体重をかけますし、足の健康にも関わる大事なものです。

靴の良さが分からない人はこの歌でも聞くと良いですよ。


僕は日本の平均より、足が大きくて甲も少し高いので市販の靴がほとんど入りません。
日本の紳士靴は27cmくらいまでの製造がほとんどで、気に入ったデザインの靴はほとんど履けませんでした。
履けたとしても高価でその上履き心地に違和感を覚えるものがほとんどで、靴下がすぐに破れるようなものばかりでした。
4万円くらいの高価な靴でも2,3年履けばボロボロになってしまいました(手入れはしています)。

そういう事情で、オーダー靴に手を出しました。
聞くところによるとオーダー靴は高い。6万円くらいのセミオーダーや、数十万円するフルオーダー(ビスポーク)まであるとのこと。
お金が余っているわけではないですが、それに見合う価値があればどうにかする覚悟はありました。

ゴトウ靴店


僕の中で「近場で済ませる」という考えがあります。
今回紹介する『ゴトウ製靴』も僕が住んでいた場所から徒歩数分の距離でした。
なんとなーく、話を聞いてみようかなー、と入ってみたのですが、
そしたらとんでもない職人さんだったのです。


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ゴトウ製靴は職人さんが一人で営んでいる小さな製靴点です。
点内には良く整理された作業場と棚に所狭しと並べられた木型(ラスト)が目に入ります。
店主の後藤保行(ゴーさん)さんは紳士靴で50年以上のキャリアを持つ本物の職人さんです。
手製靴(ビスポーク)が最も得意で、計測、木型調整、裁断、製甲、底付け、仕上げ、修理を一人で行います。
職人気質なところもありますが、とても穏やかで謙虚で靴についての色んなことを教えて頂けます。
お弟子さんもたくさんいらっしゃるようです。


その時に興味があるスタイルについて聞いてみたところ、
「作れるけど、そんな設計じゃ10年くらい履いたらすぐにダメになるよ」
とのこと。


聞いてみて興味が湧いたので一足お願いしてみました。


フォーマルなストレートチップをお願いしました。
フランスアノネイ社のカーフを、ダイナイトソール、フルハンドソーンウェルテッド製法にて仕上げていただきました。
2ヶ月くらいで完成しました。
気になる費用はというと「うーん、10万円くらい」とのこと、どんぶり勘定です。
普通の感覚だと高いですよね。べらぼうに。
しかし、これはフルオーダー、普通のビスポークであればそれ以上する事もザラであるとか。
しかも木型の修正などの普通の靴屋であれば追加料金を取られるようなオプションもついています。
仮縫いをいっさいしないので時間と費用を抑えられるのだとか。


「(超高級靴ブランドの)JやEなんか見ても、純粋に靴だけの作りなら僕のほうが上だねえ」
とのことですが、確かにこの靴は素晴らしいです。
履いていて違和感がなく、足を持ち上げた時と着地時の感覚が異次元です。これは既成靴では味わえないオーダー靴の魅力ですね。


また、普通の靴は中敷の部分にメーカーのシグネチャや印が入ると思うのですが、この靴にはそれらが一切入っていないのです。完全に無印。
これもブランド全面押し出しの対極を行く感じがカッコいいです。
「なぜ印を付けないのか?」と聞いたら、
「そんなものなくても、自分の作った靴は見れば分かるから」
とのことです。職人です。


本人は靴のブランドにはあまり興味がないと言っていますが、僕の履いていたヤンコを見て「それ、たぶんスペインの靴でしょ?」と。
しかし本人はヤンコはしらないとのことです。


靴に10万円というと普通の感覚では信じられないと思うのですが、耐久性、履き心地などを総合考慮しても値段以上の価値はあります。
あまりに素晴らしかったので、プレーントゥも作って頂きました。
この二足があればもう靴は買わなくていいな。